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ワークショップ<語りなおし「片子」>

November 13, 2017

 「片子」という昔話をつくりかえるワークショップを設計した。「昔話を社会の深層心理ととらえ、社会に箱庭療法を施す」ということが基本的なアイデアとなっている。これを何度か継続して行い、「片子」という昔話を更新することを目標とした。

 この記事では、このワークショップの記録を定期的に更新してゆく。まずは、ワークショップの詳細について記しておく。

 

<概要>

 アイデア:ワークショップは箱庭療法という心理療法の一種をモチーフにして行う。本来個人に対しておこなわれるこの療法を、昔話を媒介に集団で行うことにより、社会に対して治療を試みることができるのでは?というアイデアを実践する。「社会への治療」の必要性については後述。

 

 環境:箱庭療法は、セラピストが見守る中、クライエント(患者)がおもちゃを用いて風景をつくるという療法である。非言語的な表現によって心理の過程が進行するということらしい。守られた雰囲気が重要とされるため、閉鎖的な空間で行われる。これを集団で行う際においても、退行的な表現を促すためにできるだけ閉鎖的な空間で行うことが好ましいと考えられるため、自宅にてセットを作り環境を整備した。

 

 参加者:参加者はまずは知り合いから募った。ある程度打ち解けた関係のほうが、こうした物語作りにおいては柔軟な発想が生まれるだろうと考えた為である。治療の対象はあくまで「社会」である為、この作品で私が扱おうと思っている問題意識に共感する人や、当事者である必要はないと考えた。もちろん、そうであってもよいが、あくまで物語の深度で対話を行い、様々な視点を織り交ぜることが重要と考えた。

 

 用具:用具については、箱庭療法で用いられるおもちゃを参考にしつつ、「片子」の昔話に登場するモチーフや、それに関連しそうなものを用意した。

 箱庭療法で用いられる「砂箱」。これにおもちゃを入れて風景をつくるのだが、この寸法は大体決まっていて、およそ内法52cm×72cm×7cmとされている。これは人が腰の高さに砂箱を置いたときに、全体を見渡せるぐらいのサイズとのことである。特に高さの7cmが重要で、この枠が精神的な囲いとなり、その守りの内側で表現することが重要とされる。このワークショップは集団で行うため、この箱をひとまわり大きく設計し、内法68,5×87,5×8cmとした。

 

 目標:対象が「社会」ということで、治療効果の測定などは当然不可能である。芸術の分野で行う以上「この社会は<治療>が必要なほど病んでいる」というある種のパフォーマンス的な側面もあり、最終的なアウトプットはあくまで未定のまま進める。集まった素材によって、その都度考えてゆくこと。それを都度かたちにしてゆくことで、「片子」の物語を複合的に更新してゆくことが重要と考える。

 

 以下、昔話「片子」のあらすじ。

 

***

 

 昔、ある夫婦がいた。夫は山へ焚き木をとりにいっては、その日暮らしをしていた。ある日夫が山で焚き木をとっていると、鬼がやってきて、「あんころもちは好きか」と聞く。夫が「あんころもちなら、女房ととりかえてもいいぐらい好きだ」と答えると、鬼は重箱いっぱいのあんころもちを差し出す。夫はそれを夢中でたいらげた。気が付くと、鬼はいなくなっていた。その日はお腹がいっぱいになったので、普段の倍も仕事がはかどったという。

 しかし夫が帰ると、家が荒らされていて、女房がいない。屋根はぶちぬかれている。夫は女房が鬼にさらわれてしまったのだと悟る。そして夫は10年女房を探しまわるのだが、ある日「鬼は鬼ヶ島にいるに違いない」と考えつく。そうしてついに鬼ヶ島にたどりつくのだが、そこで出会ったのは右半身が鬼、左半身が人間の少年であった。彼は、女房と鬼との子どもだったのだ。

 片子の案内で女房の家にたどりついた夫は、女房と再開の喜びをわかちあう。しばらくは家のなかにかくまわれていた夫だが、やがて隠れきれずに、鬼と対峙することになる。鬼は勝負で勝ったなら女房を返すと約束をする。そして餅食い競争、木切り競争、酒飲み競争と勝負するも、片子の助けによって夫がすべて勝ち、鬼が酔いつぶれている好きに鬼ヶ島から舟で脱出する。途中で気が付いた鬼が追いかけてきて、海の水を飲み込んで舟を吸い寄せるも、これまた片子の知恵によって鬼を笑わせ、退ける。

 そうして3人で村へと帰ってきたのだが、両親はいつ鬼が追いかけてくるかと気が気でなく、片子は片子で村の子どもに「鬼子」と呼ばれていじめられる。ついに片子は両親に「おれが死んだら、鬼の半身を細かく切り刻んで串刺しにして家の前に置いておくといいよ。そうすると鬼の父さんは入ってこれない。それでも入ってこようとするなら、目ん玉めがけて石をぶつけるといいよ」と言い残し、高いけやきの木のてっぺんからあっという間に飛び降りて、死んでしまった。

 母親は泣く泣く片子の言われた通りに半身を切り刻み、戸口に差しておいた。そうしてある日、とうとう鬼がやってきた。鬼はそれをみると「自分の子を串刺しにするなんて、人間の女は、ほんとうにひどいやつだ」とくやしがった。しかし、家に入ることはできない。そこで鬼は、家のまわりをぐるぐる歩き回っていたのだが、ついに裏口をぶちこわして入ってきた。そこで夫婦は片子に言われた通りに用意しておいた石つぶてを鬼の目ん玉めがけてぶっつけた。鬼は耐えきれず、「わー」と言って逃げ出し、それきりやってこなくなった。

 それから二月三日の節分になると、片子のかわりに、ごまめをこしらえて串にさし、

「福は内、鬼は外。天打ち、地打ち、四方打ち、鬼の目ん玉、ぶっつぶせ」

といって、石つぶてのかわりに、豆をまくようになりましたとさ。

 めでたし、めでたし。。。

 

***

 

<片子を選んだ理由と、「社会への治療」というアイデアについて>

 この物語には日本社会の生きづらさの元型のようなものが含まれているように感じた。そしてそれは、現代の社会において浮上してきた問題と重なる部分が多いように感じた。

 それは、「異物」を受け入れる・対処する際の精神の物語であり、そしてその行為の「主体」というテーマでもあるように思う。それが自殺によって村の同質性が守られるという結末には、この社会の「空気」と呼ばれる言語化しづらい圧力の姿があるように思われた。

 また、この物語を1900年代後半に「日本人の近代的自我の確立」「精神的分裂」とでもいうような文脈において見つけ出したのは、心理学者の河合隼雄であった。彼はまた、非言語的な表現を用いる箱庭療法が日本人の心性にあっていると思い、日本にこれを普及させた功労者ということである。箱庭療法は日本において、世界でもっとも広く早く普及したとか。ヨーロッパ的な方法論や思考を、心理療法の現場でそのまま適用する際に困難さを感じた彼は、あくまで臨床の現場で日本人の精神にあう方法を探したそうだ。

 近代化以降、そして戦後と、二段階で急速に西洋の文化を一生懸命に輸入してきた日本社会。しかし3.11の原発事故以来の社会を眺めていると、どうしてもこの文化受容におけるコンフリクトが解消されていないように感じた。異物を受け入れよう、個として自立しようというスローガンがむなしく響くのみで、本質的な変化はなかなか観測しがたいように思われた。ここにはかつて、明らかに表現の困難さがあった。日本的なるものを表現するためにすら、西洋的方法を用いなければならないというコンフリクトである。

 しかしこのコンフリクトは社会の困難さとして直接に扱われておらず、個々人がそれぞれになんとなく解消すべきものとして、この社会に位置づけられているように感じていた。そして現在、それは個々人の精神的な困難さとひきかえに、なんとなく乗り越えられつつあるのかもしれない。しかしこれが個々人のものとしてしか扱えないということは、そもそも異文化を受け入れる母体となる「私たち」という主体・文化が存在しないことと同じではないかと考えていた。これでは文化が社会をテーマにすることは非常に困難だろうなあ、と考えていた。というかそもそも、そのような文化を生成する公的な共同体が無いということなんじゃないのか。

 こう考えた時に、だいたい2つのリアクションがある。1つは西洋並みの「公共」という物語を何とか作り出そうとする方向。もう1つは、日本の歴史から文脈を掘り起こそうという方向である。ところで、そのどちらでもいいのだけれど、これを考える「私たち」という主体を仮想できなければ、そもそもどこにこの議論が蓄積されるのか?と思うのだ。

 そこで、これをいかに扱い得るかを考えていたところ、この物語と20世紀の「近代的自我の確立」というテーマへの取り組みと出会い、これを更新することで一つの解答となるのではないかと考えた。

 社会の主体たる個人と、集団。「私」と「私たち」との間にある断裂を「傷」ととらえ、それを治療することで、「私たち」という主体の可能性を考えられるのではないか。これが社会へ治療をしようなどと思いついた理由である。

 ということで、長々と書いてしまった上に大半が繰り返しになってしまい、自分の文章力に絶望しつつ、とりあえずこれを考えるためにワークショップの記録を更新してゆくことにする。

 

 

 

 

 

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